東京高等裁判所 昭和25年(う)3172号 判決 1950年11月11日
被告人
月岡晃事
成慶煥
主文
本件控訴はこれを棄却する。
当審における未決勾留日数中参拾日を原審の本刑に算入する。
理由
弁護人白石資明の控訴趣意第一点について。
所論の公判調書と押収目録との間に契印がないことは所論の通りであつて、右は刑事訴訟規則第五十八条の規定に違反しているものといわなければならない。しかし右契印を欠いているからといつて直ちに右書類が無効であり又は延いて押収手続が法令に違反したものとすべきではなく、その書類の効力は専ら裁判官が諸般の情況を判断して自由裁量によりこれを決すべきものである。今本件記録に徴するに所論の公判調書は裁判官が小切手(額面一万七千円及び二万八千百円の二枚)を領置する旨を告げたとの記載があり之と右証拠金品目録記載の小切手とは符合していることが明らかであるから右契印の欠除は、右書類の効力に影響を及ぼさないものと認むべきである。従つて押収に係る小切手(中略)一通の存在を罪証に供した原判決には所論のような違法はなく論旨は理由がない。